ピックアップソーシャルプロジェクト

棚田保全プロジェクト

棚田について

 棚田は山地や丘陵地などの斜面に階段状にひらかれている水田のことをいいます。全国に棚田は22 万ha あり、兵庫県には、4000ha存在しています。現在は棚田の多くが手入れを放棄され、荒廃しつつあります。その数は年々増加しています。大型の機械を使えないことや、水が入りにくいことから、その耕作には相当な重労働がかかり、地域での作業者が減っていることが理由としてあげられます。過疎化、少子高齢化、労働力不足などとともに、赤字の経営や鳥獣被害等もその他の理由となります。

しかし、棚田を失ってしまうことは非常に耐えがたいことです。その理由は以下です。

 棚田が米を作る生産の場としての役割の他に、平地の水田以上の多面的機能を有することである。その多面的機能は保水・洪水調整・土壌侵食防止などの国土・環境保全、両生類・魚類・昆虫・鳥類・哺乳動物など多様で独自性をもった生態系保全の役割や日本人の原風景といわれる棚田景観の文化的価値などである。これらの機能は、環境人間学的にも非常に重要なことであり、生産性の劣る棚田が生産の場としての役割を喪失させる中で、注目されるようになったものである。
[棚田と人をつなぐ仕組みの現状と課題―棚田を保全・活用するための「ヒト継ぎ」、「ヒト起こし」の提案―
 永菅 裕一 (NPO 法人 棚田LOVER’s)著]

このように、棚田には①国土・環境保全、②生態系保全、③景観の文化的価値の3つの極めて素晴らしい機能を有しています。

棚田LOVER’sについて
棚田との出会い
 永菅さんが棚田に出会ったのは大学三年生のときでした。「棚田がなくなる」というお話を地元の方から聞いたのがこの頃です。直感的に、このままではいけないと感じたそうです。

 このころ永菅さんは環境学習に興味を持っていました。子どもたちに環境問題について伝えたいと大学時代は様々な活動を行っていました。そんな時に棚田と出会い、環境学習と棚田が結びつくのではないかと思ったと言います。この2つを上手く繋げて棚田で様々なイベントを行えば、棚田保全や棚田を盛り上げる活動にもつながり、また外部からの参加者によって田植えや稲刈りを行えば、作業力不足も解決するのではないかとひらめきました。棚田保全になる上にそういった実務的な部分も補っていけるのではないかと現在活動しています。

 棚田LOVER’sの現在(2015年)の経営耕地面積は約3反(3000㎡)で収穫量は約200㎏です。数字としてはまだまだ少ないですが、今できるところを確実にやっていこうと思っている、と永菅さんは言います。「土地を広げるのと同時並行で、作物を育てるための技術力を上げていかないとだめなんです。農薬、化学肥料を使わずに活動しているのが、特徴的でたくさんの生き物が田んぼに棲んでいます。」と語りました。

棚田LOVER’s理事長永菅裕一さん



環境教育への想い

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 棚田LOVER’sの活動の原点は永菅さんが高校生の頃に環境問題に興味を持ったことにあります。「これから地球環境がどうなってしまうのか」とか、「このままでは地球が危ない」とか、そういった内容の映像をテレビで見た時で、何かできないかと考えるようになったそうです。
 その後、環境についての勉強ができる学部があると知り、姫路工業大学(現兵庫県立大学)へ入学しました。永菅さんはそこで、環境学習や環境教育など、子どもたちが環境について知るきっかけを作ることで、考え方をこちらから教えるのではなくて自然と引き出すことが重要であることを学びました。

 「環境を考える際に、命、食、農、環境の大切さを学べば、そこから命や食や農や環境などを守ることの大切さが理解できるのではないかと、実体験の中で大きな気づきがあるのではないかと感じました。田植えや稲刈りを実際に体験することで、こんなにも大変なんだと気づく。そしたら、ごはんも残さないようにしようと、子どもたちは自ら自然と思うようになりますよね。」

 棚田での「カエルの卵観察会」でも、実際にこのような環境で生き物が『食べる食べられる』の食物連鎖の過程などを自ら知ることで食や命、生き物を大事にしようという心が芽生えるんではないかと思い、この活動をしています。