ピックアップソーシャルプロジェクト

特定非営利活動法人しゃらく

NPO法人しゃらく設立の経緯
バリアフリー旅行の先駆け

 それから、と話がつづくのでしょうか。「さいごになるかも知れないと言っていた旅行も、帰りになると、水仙を見にいきたい、長野にも行きたいと次から次に、次のプランが。」とお客様の感想を綴ったブログを見つけた。ブログの主は、NPO法人しゃらく代表の小倉譲さん。
 NPO法人しゃらくは「ゆとりあるライフスタイルを提案し、心のバリアフリーを推進する」という理念を掲げ、要介護の方々への付添旅行業をはじめ多くのサービスを提供しています。法人設立は2006年の1月、さきほどのブログの日付をみると2015年の1月でした。9年間の活動のなかで、ご案内した旅は2000回を超えました。
 旅行会社で「バリアフリー旅行」というジャンルを見つけるようになったのは最近のことです。重度の方を専門とした旅行会社で、しっかりとした実績があるのはNPO法人しゃらくの他ありません。

自分の闘病と祖父の介護
福祉の現実を目の当たりに

代表 小倉譲さん

 小倉譲さんが福祉に関心を持つようなったきっかけはご自身のご病気だそうです。「中学・高校時代持病のため入退院を繰り返していました。そのころに難病の子供たちと触れ合ったことがきっかけとなった」と小倉さん。そうして老人ホームでのボランティアなどに積極的に参加するようになったそうです。

 しかし、施設に入居している方々は、皆同じような服装や髪形をしていたそうです。「介護の効率性を重視しすぎるあまり、画一的な枠にあてはめられ自由を楽しむ余裕がないように感じられました。こんな福祉は絶対にしたくない」と強く感じた小倉さんは、当時(約20年前)の福祉業界に疑問を感じ自分の理想の福祉をしようと決意しました。

 中国での4年間留学や立命館アジア太平洋大学での学びのあと、「大きな変化があった」と、お祖父さんの介護が始まった2004年を振り返ります。お祖父さんは糖尿病をはじめ、認知症・肺気腫・がんなどを患っていました。お祖母一人ではと、当時サラリーマンだった小倉さんも金曜日の夜から日曜日の夜まで介護を手伝いました。

旅行をきっかけに
お祖父さんが旅で起こした奇跡

 元気だったころのお祖父さんと何度も旅行した小倉さん。「今年も旅行しよう」と誘ったおじいさんの希望の地は生まれ育った徳島県鳴門市でした。「人丸神社にお参りにいきたい」という願を叶えてくれる旅行会社やツアー会社はありませんでした。どこも、要介護後のお年寄りに旅は難しいと思ったのでしょう。

 小倉さん自らプランしたその旅行で奇跡を目にします。ほとんどが車いすでの生活で、家の中でもベッド・食卓・トイレまでの短い移動しかできなかったお祖父さんが神社へ到着すると、車いすから立ち上がり、目の前にある長い階段をゆっくり一歩一歩昇り始めたのです。その姿を見た小倉さんは衝撃を受けました。
 無理だと思い込んでいたことが、「旅」という非日常の雰囲気と心の充実によって可能になることを知った瞬間です。この出来事をきっかけに、付添介護付き旅行業「しゃらく」の挑戦が始まりました。

旅は心とからだのリハビリ
旅こそ最高のリハビリ

 
 お祖父さんとの旅行で行きたい場所に行くことで、人間には信じられない力が湧き出てくると実感しました。旅行にでかけると表情も明るくなり、楽しい気持ちから口数も増える。日々の生活で後ろ向きだった気持ちが、旅行によって前向きに切り替えることができるのです。この実感をもっと多くの人に感じてもらいたい、もっと外に飛び出していってほしいという想いで事業をスタートさせました。ご祖父さんの出来事の約1年後のことでした。